鹿児島県とはどのような場所でしょうか。
こちらの記事では、鹿児島県の特徴や食文化について紹介していきます。
鹿児島県の特徴
鹿児島県は九州の南部に位置し、薩摩半島や大隅(おおすみ)半島、さらに複数の離島から構成されています。中央部を「霧島山(きりしまやま)」「桜島」「開聞岳(かいもんだけ)」などの霧島火山帯が縦断し、11の活火山が分布し、全国110の活火山のうち1割を占めています。鹿児島市街地から、鹿児島湾(錦江湾)を挟んだ東の方角へ目を向けると、桜島が雄大にそびえており、煙をあげる桜島は、地元民にとって日常の風景になっています。
本土最南端という地理的特性を生かして、古くから中国や朝鮮、東南アジアなどと交易を重ねてきたことにより、砂糖きび、甘藷(かんしょ)、落花生、孟宗竹(もうそうちく)などが伝来しました。のちに、これらを活用した料理がつくられるようになり、鹿児島県の食文化として定着していきました。また、律令時代には薩摩国・大隅国の国府が置かれ、都の文化が流入し、多様な食文化が形成されました。
鹿児島県の食文化
今回は薩摩地域、姶良(あいら)・伊佐地域、大隅地域、薩南諸島地域に分けて、それぞれの食文化を紹介します。
<薩摩地域> 薩摩藩主島津家の余ったごちそうから生まれた「酒ずし」
薩摩地域は鹿児島市を中心に枕崎(まくらざき)市、南さつま市、南九州市などで構成されており、本州の文化圏や大陸文化などが入り混じり、古くから鹿児島県の中心地として栄えてきました。県庁所在地の鹿児島市は、かつて島津氏が治めていた薩摩藩の城下町が置かれていました。
薩摩藩主であった島津家の殿様が、花見の宴会後に余ったごちそうと酒を一緒にして桶に入れておいたところ、翌日発酵して良い香りを放つ料理になっていたのが「酒ずし」で、以来、上流階級のごちそうとして広がりました。
「酒ずし」は、鹿児島市をはじめ県内全域に広く伝わっている祝い食で、酒をまぶしたごはんの上にタイ、エビ、イカなどの海の幸とふき、たけのこ、しいたけなどの春の具材を交互に重ねて作る「押し寿司」のような料理です。この料理の最大の特徴は、ごはんに「灰持酒(あくもちざけ)」がたっぷり混ぜこまれていることです。もろみに灰を混ぜてつくられた清酒で、鹿児島県では、みりんの代わりに使われています。
<姶良・伊佐地域> 江戸時代の貧しい庶民たちを救った「からいも」
姶良・伊佐地域は県北央部に位置し、日本で最初に国立公園に指定された霧島をはじめとする景勝地や温泉地、日本一の大樹「蒲生(かもう)の大クス」など、観光資源が充実しています。地勢や気象などの立地条件を生かし、水稲や茶、野菜、肉牛などの生産も盛んで、米の生産量は県全体の約3割を占めており、県内外へ出荷されます。
鹿児島県が生産量全国1位を誇るさつまいもは、県内各地で栽培されており、伊佐市は焼酎発祥の地とも言われています。中国から琉球を経由して伝わってきたことに由来して、地元民の間では「から(唐)いも」や「かいも」の名で呼ばれます。
「からいも」は、江戸時代はじめに坊津地区などにもたらされ、元禄時代に種子島に普及、ついで揖宿(いぶすき)郡へと伝わりました。
火山灰の台地は「からいも」の栽培に適しており、たくさんの収穫量が見込め、課せられる税も少なかったため、主食や救荒作物として、貧しい庶民の間に浸透しました。
現在でも鹿児島県では「からいも」が食べられています。「からいも」をお米と炊いた「からいもごはん」や、お餅と「からいも」を練ってつくる郷土菓子「ねったぼ」などがあり、このようなレパートリーが古くから親しまれています。
<大隅地域> 桜島大根と養殖ブリで作る「ぶり大根」
大隅半島は鹿児島湾の南東に位置し、半島の東西は、志布志(しぶし)湾と鹿児島湾に接しています。鹿児島湾に浮かぶ桜島とは、大正3年(1914年)に起きた大噴火により陸続きになりました。
気温は比較的温暖で、日照時間は長く、農作物の生育にも適しています。さつまいも、いちご、みかん、マンゴー、白菜、肉牛など品目は幅広く、なかでも黒豚や黒毛和牛などの畜産は全国有数の供給基地となっています。
近年は、垂水(たるみず)市や鹿屋(かのや)市、南大隅町などの養殖ブリ、カンパチが有名で、1950年代、垂水市では牛根漁業協同組合が県内で最初に養殖業を始めました。牛根漁業協同組合が育てたブリは「ぶり大将」として鹿児島県のブランド魚となっています。
この地域で親しまれているのが「ぶり大根」で、桜島の特産である「桜島大根」を使っています。「桜島大根」は、世界最大の大根ですが、肉質が緻密で繊維質が少なく、煮込んだときに箸で切りやすい柔らかさなのに煮崩れしにくいという特徴があります。また、最近では、桜島大根に含まれる成分「トリゴネリン」に血管機能の改善効果が期待できるということから、健康食材として注目されています。
<薩南諸島地域> 薩摩藩の役人をもてなすために作られた「鶏飯」
薩南諸島とは、大隅諸島、トカラ列島、奄美群島など鹿児島県に属する島々で、佐多岬から沖縄本島まで500kmあまりの距離に南西方向に伸びる列島、群島の総称です。これらの島々の気候は温暖で海洋の影響を強く受けるため、各島で個性豊かな文化が育まれてきました。
奄美大島は、奄美群島のなかでも最大の島で、群島の政治、経済、文化の中心地となっています。
奄美市笠利町(かさりちょう)周辺を発祥とする「鶏飯(けいはん)」は、茶碗に盛ったごはんに、ほぐした鶏肉、錦糸卵、しいたけ、海苔、白胡麻などを乗せて、丸鶏を煮て取った出汁をかけてお茶漬けのようなスタイルで食べる料理です。奄美の人々が薩摩藩の役人をもてなす料理として考案されたとされており、別名「殿様料理」とも呼ばれるようになりました。
鹿児島県では奄美大島以外でも定番の郷土料理として浸透しており、県内各地の学校の給食メニューとしても定番となっております。