宮崎県とはどのような場所でしょうか。
こちらの記事では、宮崎県の特徴や食文化について紹介していきます。

宮崎県の特徴

宮崎県は九州の南東部に位置しています。温暖な亜熱帯気候に属しているため、年間の平均気温は約17度、日照時間や快晴日数も全国トップクラスとなっており、一年を通してさまざまな農作物や樹木が成長しています。

県土は県北地方・県央地方・県西地方・県南地方と4つに分けられ、それぞれ山側と海側で気候風土や食文化が大きく異なります。面積のほとんどが山地で平野が少なく、東部の海岸線から西部の山間部に向かうにつれて、次第に標高が高くなるという立体的な地形をしています。

東側は日向灘に面しており、海岸線は南北約400kmに及びます。お倉ヶ浜や木崎浜などのビーチはサーフスポットとして知られています。平野部では米や野菜がつくられ、沖合は豊後水道から流れ込む沿岸流と黒潮が混ざり合う好漁場であり、マグロ、カツオ、伊勢海老、アジなどが獲れます。一方の西側は急峻な九州山地が連なっているため、山菜やイノシシなど山の食材に恵まれ、天孫降臨など日本の古い神話に紐付いた食文化も残ります。また宮崎県は日本の最多雨地帯の一つで、高温多湿な気候と豊富な日照が育てる飫肥杉(おびすぎ)も特産品となっています。

気候風土に恵まれた土地に見えますが、毎年人々を悩ませているのが台風です。かつては「台風銀座」と呼ばれ、毎年夏に台風が上陸しては農作物を台無しにしてきました。そこで通常の出荷時期より早い時期に出荷する早場米、ハウス栽培、施設の中で育てることができる畜産業が発達し、特に畜産業では牛・鶏・豚のいずれも日本有数の生産量となっています。

宮崎県の食文化

今回は県北地方・県央地方・県西地方・県南地方に分けて、それぞれの食文化を紹介します。

<県北地方> 神秘的な山に伝わる行事食

高千穂郷は、熊本県と大分県の県境にあり、高千穂町・日之影町・五ヶ瀬町・椎葉村・諸塚村の5つの町村で構成されています。国の名勝天然記念物に指定された高千穂峡や、日本神話の中に書かれている天照大御神様が隠れた天岩戸を御祀りしている天岩戸神社など、パワースポットが点在し、人々の生活にも神様を重んじる文化が浸透しています。

毎年11月中旬から翌年2月上旬におこなわれる「夜神楽」は、里ごとに氏神(うじがみ)様を神楽宿と呼ばれる民家や公民館にお招きし、 三十三番の神楽を一晩かけて奉納します。夜神楽の際、神楽宿が客人へ振る舞う「煮しめ」という料理があります。季節の野菜、特産の干し椎茸、里芋、たけのこなどを調味料(醤油・みりん・砂糖)と一緒に煮汁が残らないように時間をかけてじっくり煮つめます。日常の食事においてもよく食べられていますが、お正月のおせち料理でも食べられています。

椎葉村では、旬の野菜や椎茸を入れてつくる「菜豆腐」をお祭りや冠婚葬祭の際に食べていました。昔は大豆が貴重だったため、野菜を入れてかさ増ししていたと言われています。見た目も美しい「菜豆腐」は、甘口醤油、柚子味噌、練り味噌などをつけて食べます。

東側の海に面する延岡市は、東西に流れる五ヶ瀬川など合計4つの川の三角州平野に位置しており、海と川の両方に漁場があります。特に鮎は有名で、五ヶ瀬川には毎年10月上旬から12月にかけて鮎やなが設置され、とれたての鮎料理を楽しむことができます。宮崎県全域で食べられている「チキン南蛮」は、実は延岡市が発祥で、昭和中期に市内の有名洋食店で働いていた2人の料理人がまかないとして生み出したものです。鶏肉はモモ肉を使うお店もありますが、元祖は胸肉を使用しています。

<県央地方> 平野部の気候に合わせた食事

県内で最も人口が多い県央エリアは、宮崎平野が広がる県庁所在地の宮崎市、九州山脈の中にある米良山地、地場産業としての手作り工芸の振興に取り組む綾町などがあります。ゴルフコースやサーフィンスポット、「鬼の洗濯板」 と呼ばれる不思議な波状岩に囲まれた青島は人気の観光地となっています。

宮崎平野は夏になると特に高温多湿で暑さが厳しくなるため、食欲のない時にでも食べられる「冷や汁」が定番料理として根づきました。かつて農家が夏の農作業の間に、前日に残った麦飯に水で溶かした味噌をかけて食べていたことが元になっていると言われています。炒った煮干しと味噌を合わせて焼いたものを出汁でのばし、大葉やきゅうり、豆腐などを加えた汁を冷たい麦飯にかけて食べます。旨味たっぷりの冷たい汁が火照った体を冷やしてくれ、暑い夏の夏バテ対策メニューとしてテレビや雑誌に取り上げられています。

宮崎市や国富町では、冬になると「霧島おろし」という霧島連山から吹きおろす寒風と晴天を利用して、日本一の生産量を誇る「千切り大根」をつくります。干し棚の上で千切りの大根を広げて干す光景は、冬の風物詩となっています。千切り大根の「まだか漬け」は、宮崎県の漬物で、あまりの美味しさに出来上がるのが待ち切れず「まだかぁ~」という声があがることが名前の由来といわれています。千切り大根、人参、しょうが、干し昆布、スルメイカ、炒った大豆など体に良いものが具材に入っている健康的な料理です。

<県西地方> 霧島の麓で根付くからいも文化

20あまりの火山からなる霧島連山を有する県西地方は、畜産や米づくりが盛んで自然豊かな地域となっています。大淀川の支流・庄内川にかかる「関之尾の滝」は、長さ600m、最大幅80mに渡って小さい瓶のような穴の集合体「甌穴(おうけつ)」が見られる珍しい滝です。この規模は、世界一とも言われており、国の天然記念物に指定されています。

県西地方は、かつては薩摩藩に属していたため、言葉や食文化など鹿児島県と類似している部分がたくさんあります。なかでも「からいも」(サツマイモの別称)を食べる文化が根付いており、シラス台地と呼ばれる火山灰土壌が美味しいさつまいもを育てています。さつまいもの細切りに衣をつけて揚げた「がね」は、南九州(都城市・鹿児島県)地方などの代表的な郷土料理です。「がね」という言葉は、この地方の方言でカニを意味し、「からいも」を細く切り、溶いた小麦粉に混ぜて揚げてできあがった姿がカニに似ていることから、その名が付いたと言われています。宮崎県の場合は衣に砂糖を入れて甘めの味付けにして食べます。

もう一つさつまいもを使った「ねりくり」という料理があります。地域によって、「からいも餅」「ねったぼ」「ねったくり」などの呼び名がありますが、餅にさつまいもを練り込んできな粉をまぶして食べます。「ねりくり」とは、宮崎弁で『つきまぜる』という意味で、「ぼったぼった」と練ってつくところからその名が付いたと言われています。「ねりくり」は、スーパーや道の駅などで購入することができます。

<県南地方> 大衆魚をおいしく食べるために生まれた「おび天」

日南市・串間市の2つからなる県南地方は、日向灘を回流している黒潮の影響で高温多湿、特に海岸部は「無霜地帯」と呼ばれ、冬でも非常に温暖な気候となっています。日南市の宮浦には、イースター島から正式に許可を得て復元されたモアイ像が並んでいる公園「サンメッセ日南」などユニークな観光名所もあります。

日南市中央部にある飫肥(おび)地区は、伊東飫肥藩5万1千石の城下町として栄えました。地方における城下町の歴史的風致をよく現した地区で、現在もまちには石垣や古い建物が残り、九州地区で最初に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。飫肥地区では油津であがった魚介類が流通しましたが、庶民が口にできたのはイワシやアジなどの大衆魚だったため、これらの魚を美味しく食べるために生まれたのが「おび天」でした。魚をすり身にし、豆腐、黒砂糖、味噌を合わせて油で揚げたもので、鹿児島県の名物「さつま揚げ」に似ていますが「おび天」はさらに甘味が強く、おやつとしても食べられます。

日南市の北郷町では、川でとれるモクズカニ(山太郎がに)をタンパク源やカルシウム源として食べてきました。9月から10月にかけて、広渡川に産卵のために下ってくる山太郎がには味が良く、北郷町に伝わる「かに巻き汁」は、そんな山太郎がにをすりつぶし、味噌と合わせることで旨味たっぷりの味噌汁です。この地域ならではの秋の味覚となっています。

同じタグの記事を見る

#移住 #宮崎県